これらについては、メディアにおける「登場人物設定のガジェット」というべき類に入るとも考えられるが、作品の主題ではないことが明らかであるにもかかわらず敢えて「女装」の状況を作品に挿入する理由がまた別にある。
このようなメディアの読者・消費者が、女装や性転換、ふたなりなどに対し魅惑を抱いている可能性が高い。21世紀の魔術的観念論ともいえるが、ジェンダーの像は時代や社会と共に変動しており、20世紀後半以降となると、固定的なジェンダー・イメージに対する疑問が提示され、性の多様性はすなわち「ジェンダーの多様性」であり、性役割や性自認に関してより柔軟で可能性の高いイメージが潜在的に求められているといえる。
自己の存在のありように対し、より高い自由度を求めると共に、時代や周囲の文化の流行が一つの規範ともなっている。男性か女性かのジェンダー・アイデンティティは誕生後24月程度の時期に確立されるとされるが[13]、性役割の認識と学習はそれよりも時間が必要であり、両親が子供をどのように扱うか、幼稚園・学校の教師の影響、更に同級生や同じ年代の子供のジェンダー概念が大きく影響する。加えて、子供の周囲に存在する多様なメディアのメッセージがこれに関係する[14]。子供自身は「自己の性別は生涯変更することができない」ことを学習するのは一般にプレ思春期に入ってからである(かなりな確率で出現する半陰陽の人の性自認の問題はここでは別にする)。
日本では、10〜20代の青少年のあいだで性的自己同一性が拡散しているとの文献的報告による裏付けはないが、メディアが提供する仮想世界の状況では、男女の性転換が容易に可能であり、性役割の移行が表現され、両性具有性が実現されている。消費者は「女装」表現に魅惑を覚え、これを「萌え」とも称している事実がある。やおいにおいて男性キャラクター間の同性愛関係設定に魅惑があったように、男性登場人物に「女装設定」を行うことが、読者には魅惑要素となっているのである。
読者主体にとって、自己の性自認や「ジェンダーの多様性」の要請が、このような魅惑(萌え)となっているのか、このような魅惑が「流行規範」として個々の消費者を規制しているのか、現状では不明である。
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